「ってことはあのイケメンのお父さんも職場にキャラ弁持ってってるの?」

「……今日は、自分で作ってたみたいだけど……」


拓真が“イケメン”なのかどうかは引っかかったけど、これ以上拓真について余計な事を突っ込まれたくない私はとりあえず適当な返答をしておく。

クスクスと笑い続ける真人の横目に見ながら諦めて弁当箱を開くことにした。

うわ……ご飯を丸めて作られたクマがウインクをしている。
目と口はノリをカットしてあるみたいだ。
……かたっぽ蓋についてとれてるからちょっとグロテスクなことになってるけど……
この飾り付けの星はなんだろう……渋々箸でつまんでみればゆで卵の白味だ。

あいつは一体何がしたかったんだろう……


「一個ちょうだいよ」


笑っていた真人は、横からウインナーのカニを一匹さらった。

拓真が手ずから形を整えたカニが真人の喉を通って行くのを、私は何とも言えない心もちで眺めた。


「うまい」


そう言って笑う彼に、なんだか情けなくなってしまった。