砂の鎖

「会社行きたくないな……」

「子供みたいなこと言ってるんじゃないわよ」


珍しい拓真の愚痴に私は少し笑って。
それでも冷たく叱咤する。


「……そうだね。人のこと“バカ女”とかいうもんじゃないってあずに説教しなきゃいけないところだった……」

「だってバカじゃない」

「仕事はできるんだけどね……空気読めないっていうか読まないっていうか……。だから仕事できるんだよな……彼女は……」


そう巧はぼやいて大きくまた溜息を吐いた。
拓真はどうやら、本当にあの女が苦手みたいだ。
珍しい拓真の表情からそれがよく分かる。

私はとても性格悪いのだと思う。
拓真の嫌そうな表情に安心してしまった。


「あんたを好きだなんて相当バカよ」

「薫さんはどうなるんだよ」

「ママがバカじゃないとでも?」

「うーん……」


いつも通りの特に意味も無い会話。

昨夜どんなにきまずくても、私たちは朝になればまたこうしてどうでもいいことを話し合う。
そうして三年間やってきた。

私たちは、確かに家族なのだろう。