砂の鎖

***

結局、殆ど眠る事はできなかった。
それでも何故か目が冴えていた。

起きていた私は六時頃には部屋を抜け出して、仏壇の前で線香を立て鈴を鳴らす。
いつも通り軽やかな音。
いつも通り艶やかな笑顔のママ。

そしていつも通り、私は祈るでもなくママの遺影を睨み付けた。
ママはもう、私が怒っても笑っている。
私が泣いても笑っている。
詰っても笑ってる。

大好きだと言っても、抱きしめてはくれない。


私に何一つ大切なことを言わず、私を置いて、勝手に死んだママ。

だから私は、ママが嫌いだ。


ママが死んでから、何度思っただろう。
何度考えただろう。


もし、拓真とママが入籍をしていなかったらと。


そうしたら、私の想いは伝えても良いものだった筈だ。
想いが叶う事もあったかもしれない。


死を覚悟していたなら、どうして拓真と籍をいれたんだ、と……


私の好きな人を奪ったママ。

それがもう一つ、私がママを嫌いな理由。


それでも、ママと拓真がただの恋人だったら、私と拓真が二人きりで暮らすことはできなかった。
私は施設に保護されて、この家も手放さなければならなかっただろう。

ママと拓真が恋人ではなく夫婦で、拓真と私が男女ではなく親子だったから、辛うじて私はこの家に今も住み続けることを赦された。

拓真と二人でこの家で暮らし、そして拓真を好きになった……