砂の鎖

「あず……本気で言ってるの?」


黙って聞いていた拓真が、眉を垂らして傷付いた顔をしていた拓真が。
私の心にもない。いや、意味の無い言葉に、少し真剣な表情をして問い返してきた。


「当たり前じゃない。大っ嫌い! どうせあんたと私は他人でしょ? 家族ごっこなんてしてるのがおかし……」

「家族なんて元はみんな他人だろ!」


それでも、言い始めた言葉を止めることもできない私の声を遮って拓真は私を睨み付けるようにして怒鳴った。


「……なに、それ……」


思わず、私の言葉も勢いを失う。
今まで、拓真が私に対して感情的に声を荒げたことなんて、一度だって無い。
いつもただただ私に対しては甘ったるい男で、こんな風に怒った顔は見たことがない。

横井親子に謝った生活指導室の拓真でさえ、別人に見えたと言ってもこんな風に感情的だったわけじゃない。


「夫婦なんて元は赤の他人だ」

「でも、親子は……」

「男親なんて妊娠するわけじゃない。自分の子供だって思い込んでるだけだ」


拓真の言葉は暴論だ。
それでも余りにはっきりと言われてしまえば、私には言い返すことができない。

拓真は一度、自分を落ち着かせるように息を吸って、それからニコリと口角をあげた。
いつも通りに。
いやいつもより、少しだけ寂し気に微笑んで。

そして私の頭にそっと右手を置いて……


「……みんな、初めは“家族ごっこ”だ」


優しく撫でられると、私の瞳からぽろりと、涙が一粒零れ落ちた。