砂の鎖

***


ガチャガチャと玄関の鍵を回す鈍い音が聞こえ、私は肩を揺らした。

私が部屋に入ってから一時間近く経過していた。
拓真はあの女を追い返すのにそれだけ時間をかけたらしい。

それが長いのか短いのか、どちらなのかは分からなかった。


随分と時間が経っていたから私の涙はもう引いていて。
それでも私は慌てて頬を拭った。

出入り口から目を背け、私は暗くなった窓に目を向ける。
電気をつけてもいない。
カーテンも閉めていない。
だから、内と外の境界がひどく曖昧だ。

廊下から響く足音が近づいてきて、それからリビングの扉がそっと窺うように開かれたのは音でわかる。
パチリと、スイッチを入れる音から一秒遅れてリビングの灯りが無遠慮に灯った。


その瞬間、窓はくっきりと黒く落ち込み私は何故か、閉じ込められてしまったかの様に感じた。

私は……私だけは、どこにも行くことができない……


「あず……ごめん」


スイッチの音さえも聞こえる程に拓真が立てる僅かな音にも神経をそばだてていたくせに、私はその声に振り向く事も、肩を揺らすこともしなかった。


「……出てけって言ったでしょ」


とても小さく、言葉を落とした。
拓真はそっと、私が座っているソファの隣に腰かけて。

座面が沈み込むその感覚に、心臓が締め付けられた。