砂の鎖

……でも。
私だって、本当は分かっている。


――君には大人に見えるだろうけどね……


頭の中にこだまするのは、桑山さんの言葉。


――彼の将来についても考えてあげるべきじゃないのか?


私には拓真が必要だった。


――本当のお父さんが現れたら、俺はいらない?


拓真にも、私が必要なんだ。

そう思ったのに……



拓真はいつも私の前ではヘラヘラしてて、情けなくて、鬱陶しくて。


――父親なんだから、当然だろ?


そう言っていつもの顔で私を甘やかす。


だから気が付いていなかった。

違う。
気が付かないふりをしていたんだ。



私と拓真の関係は、普通じゃない……

拓真も私も周囲から訝しんで見られている。

それでも私たちにはお互いが必要だった。


そう思った。けどそれは間違っている。


世の中は私より、ずっと拓真に冷たい筈なんだ……



ぽたりぽたりと、涙が溢れ出し、歯を食いしばるけれど……

それでも、穴が開いた容器から零れ落ちる様にとめどなく流れ続ける……


「須藤主任が好きなんです! どうして私じゃダメなんですか!?」

「佐々木!」


扉一枚を隔てた向こう側からはっきりと聞こえたその声に、私はその先を聞く勇気は無くて……
居間に逃げ込みクッションを抱えた。


――あず! 今日からここが私たちのお城だよ。


ママはいつかこの場所で、私に笑ってそう言った。
リビングと言うには狭すぎるここに立ち、誇らしげに笑っていた。


「もう……やだ……」


嗚咽に交えて、私はただただそこで、子供の様に泣き続けた。