砂の鎖

「……須藤主任」


拓真の拘束から逃れようとしていた私は、その声ふと動きを止めた。

その時やっと気が付いたからだ。
聞き覚えがある事に気が付いた。

拓真が残業で遅くなると言ったあの日。
電話口で、甘えるように拓真を呼んでいた。

あの声だ。あの女だ……


拓真は私の拘束を緩め彼女の方を向く。


「……佐々木」


拓真の第一声は、思ったよりも低かった。


「君のことは頼りになる後輩だと思っているし優秀な部下だ。仕事のことなら君がどんなミスをしようと僕は全力で君を守るよ」


その声に、女が眉を顰めたのが分かった。

私に背を向けた拓真がどんな顔でその言葉を言ったのかは分からない。
それでも彼女の表情と拓真の声から、いつもの様なヘラヘラとした表情ではないのは分かる。


「でも俺がプライベートで守る相手は君じゃない。この子だ。これ以上家庭の問題に足を踏み入れないでくれ」


家まで女を連れてきたあんたがなにかっこつけてるのよ!
頭に来て、私は背を向けている拓真をさっき出し損ねた力を込めて思いっきり殴った。


「ちょ……っあず! なんなんだよ!」


後ろからの予期していなかっただろう攻撃に拓真はよろめきながら振り向いた。