「でもね。里中君が亜澄のことが好きだったなんて今でも信じられないわ」

「それは、私もだけど……」

「あんたたち喋ったことあった?」

「うーん……あいさつ程度は……」

「優等生の里中真人も所詮は顔かぁ」


呆れたよう言う麻紀に、私は苦笑するしかない。


そんな風に話題に事欠かない私に、一月前、突然告白をしてきたのが我が校一の爽やか男子の真人だったのだから。
その噂は次の日には学校中を駆け巡った。

実際、高校に入学してから付き合い始めるまでの間に真人と話したことは数える程度。
真人が私の内面をよく知っていて、ということは考えにくい。

ママによく似た派手な顔立ちの私の『顔が好みだった』が一番しっくりする答えだから、麻紀の言い種に私は反論もできない。


「でも私としては、亜澄がOKしたのも意外だったな」


麻紀以外の女子とイマイチ上手く喋れない私は麻紀にこう言われてしまうのも納得で。


「そう? でも真人よりいい男なんてこの学校にいなくない? だってあの子、文武両道でその上医者の息子でしょ?」


別にそういう理由で真人の告白を受け入れたわけじゃない。

それでもそう、冗談にして返せばそりゃそーだと麻紀は豪快に笑った。