砂の鎖

私は一つ、大きく息を吸った。


「真人……私は、ずっと真人に憧れてたと思う」

「亜澄?」


私の言葉に、今度は真人が驚いた顔をした。


「小学生の頃からずっと、明るいところにいる真人が羨ましかった」


じっと、私を見つめたまま、私の言葉に耳を澄ませていた。
素直な言葉を馳せるのはずっと、何か恥ずかしい事の様に思っていた。

それは、どうしてなのか……


「初めて真正面から私を認めてくれた人は真人だった」


子供の頃たった一度だけ真人と交わした会話。
その会話は、授業参観日の翌日だった。


いつもよりずっと地味な、それでも周りの母親たちよりずっと派手な、ママの事が学年中で噂になった。
特に女の子たちは、母親たちが話しているのを聞いたのだろう。
ネイルがどうとか口紅がどうとか、今まで見向きもしなかった筈の常識がどうとか。
訳知り顔で噂話を楽しんで。

中には当然のように、私と付き合うなときつく言われた子もいて。

私は簡単に孤立しかけた時だった。


隣のクラスの真人が、廊下側の席に座っていた私に唐突に話しかけてきたのだ。
満面の笑顔で。


――須藤のお母さんって、美人だしかっこいいな。あんなお母さんで羨ましい。


真人の一言で、不穏だったクラスの空気が一変した。

そして私は、初めてママを褒められて、すごく嬉しかった……


初めてだった。
誰かに認められたのは……