砂の鎖

――須藤のお母さんって、美人だしかっこいいな。


それでも、私が思いだすのはいつかの真人の言葉で。

いつかの真人の無邪気な笑顔で。


「俺は、亜澄が好きだ」


そして今も、真人は真剣に私を見続けていた……
あの頃と変わらない真っ直ぐな瞳で。

それでもあの頃には見られなかった、真剣な大人びた瞳で。


「俺は、亜澄が俺のこと好きなわけじゃないことは最初から分かってた」

「それは……」


私を見透かす彼に、私は上手く答えられない。

好きじゃなかったわけじゃない。
それでも、好きだったわけでもない……


「だから俺は、別れるつもりは無い」


真人はとても真剣に、私を強い視線で射抜くように見つめていた。
その視線の強さに、少し戸惑った。

それでも、先ほどの様に、軽々しく真人の気持ちを分かった様な顔をして、笑ってなかったことにするのは無理なのだろう。

真人は、私が思っていたよりもずっと、真剣に私を見てくれていたんだ……


そして、私は今また、勝手に真人の気持ちを想像して自己完結をして、正面から考える事も無くそっと離れようとしていたのだと気が付いた。