砂の鎖

「俺は、亜澄は泣きそうな顔をしてるだろうって思ってた。……そうしたら、俺でも慰められるかもしれないって……そんな下心もあったよ。
亜澄はそれでも、俺が知ってる亜澄と変わらなかった。しっかり、前を見てた」


あの頃の私を、真人が見ていた……?
ママが死んだばかりの頃。


慣れない暮らしに、不安に、喪失に。
私には泣いている暇なんてなかった。
誰かに慰めてもらうゆとりもなかった。

ただただ拓真と、今日を生きることで精一杯だった。

現実に埋もれないようにすることで精いっぱいだった……


そんな私を、真人が見ていた……?


「俺は何してるんだろうって思ったよ」

「真人……」


真人は、唖然とする私にやはり薄く微笑するだけだ。


「それで親に、初めて反抗したんだ。勉強はするし成績は落とさない。だから陸上はやらせてくれって。
俺は恵まれた環境にいるのに何も努力してこなかった。流されるまま生きてた。
俺はずっと、亜澄みたいな強さが欲しかった。欲しいと思ってるくせに、届かなかったらカッコ悪いから手を伸ばさなかった」


真人は静かに懺悔を続ける。

私が思う真人と、真人自身が内に秘めた真人は違うんだと。
私に言い聞かせるように。


「俺はいつか……亜澄を守れる人間になりたいって思ってた……」