砂の鎖

「転校して、私立の中学に行って、陸上部に入って……けど二年になった時に陸上は辞めたんだ」


そうして、真人は恥じ入る様に笑った。
見たことのない、真人の表情だった。


「……成績が落ちたんだよ。特に母親が心配性でさ」


高校の入学式で新入生総代として挨拶をする真人を見た時私は言葉を失ったし、県大会の賞状を受け取る彼の堂々とした姿に、足の速かった彼が陸上を続けたくて、その為に私立のエスカレーターを蹴った事は簡単に想像できた。

当然ずっと、陸上を続けていたのだろうと思っていたのに……


「確かに亜澄は俺の初恋だったよ。でもそのうち忘れるだろうと思ってた。女子に告白されて付き合ったりしたこともあるし。……流されるまま生きてたんだ」


言葉を挟めない私に真人は淡々と語る。
私は、ただただ驚いて、目を丸くしたまま真人を見つめていた。


「でもそんな時に聞いたんだ。亜澄のお母さんが亡くなったって……どうしても気になってさ、一度、亜澄の中学に亜澄を探しに行ったんだ」


目の前の真人は、まるで別人の様に思えた。
私がずっと見つめてきた真人は、こんな人だっただろうか。

いや、私は……真人を本当に見つめていたのだろうか……