砂の鎖

「俺は、小学生の時からずっと亜澄が好きだった」

「……え?」


そうして告げられた言葉に驚いて、再び顔を上げれば、真人は口の端を僅かにあげて、ひきつった様な哀しい微笑を見せた。
真人らしくない。


「亜澄は覚えてないよな……同じクラスになったこともないし、俺は途中で転校したし……」


それでもそれは、真人は覚えていないだろうと思っていた幼い頃の記憶。
真人と会話を交わした、小学校の校舎。
それは私の中ではとても鮮明で……だからこそ、私は真人と付き合おうと思った記憶で……


「嘘、でしょ……」


呆然とする私に、そんな私に真人は少し苦笑してから私から視線をそらし、少し遠くを見つめた。
真人の瞳が夕日の色に染まる……


「子供の頃から何を言われても毅然としてる亜澄がかっこいいと思ってた。母親を誇りに思ってる亜澄に憧れてたんだ」


小学生の頃の真人は、あの頃から誰よりも頭が良くて足が速くて、隣の私のクラスでも、彼はとても人気があった。
子供の頃からみんなの中心で笑っている人だった。


「俺は、いつも親の言いなりだったから……亜澄に出会ってなかったら、俺は自分の意見なんて何一つ言えない人間になってたと思う」


そして私も、真人に憧れていた。
真っ直ぐに、明るい世界で笑う彼を私はずっと見ていたんだ。
彼の様な人間になりたいとすら思っていた。

私は密やかにずっと、まるで太陽を見つめるように目を細め、届かないと思いつつ、真人を見つめていた……
それは、恋なんていう、甘い感情では無かった。