砂の鎖

「さぼんなー!」


ジャージに身を包み、手に持っているノートを丸め簡易メガホンにして真人を怒鳴りつける。


「マネージャー? 呼んでるよ」

「分かってる! 今俺タイム測ったとこだって!!」


真人はそっちに向かって大声で叫んでから私に向き直った。


「亜澄。約束な」

「はいはい」


思わずクスクスと笑いながらそう言えば、真人は安心したように笑って校庭に向かって走って行った。
その背中を見送ってから、私は踵を返し駐輪場へ向かう。

真人がグラウンドに戻ってからもじっと、私を刺さんばかりに見る視線を、ずっと気が付いてはいたけれど振り払うように無視をした。

視線の主が誰なのか、私は少し前から気が付いている。

あの、陸上部のマネージャーの女の子だ。

明るいミルクベージュの様な髪を綺麗に巻いてポニーテールにまとめている。
子犬のような垂れ目がちの大きな目をしたかわいらしい女の子。
私とはまるで正反対。

あの子は多分、真人が好きなんだろう。

少しだけ気になってはいるが、彼女は私に何かを言うわけでも無いから、私から何かを言うこともしない。