砂の鎖

「始めはびっくりしたけどさ。合わないと思ったし。でも一か月付き合ってるの見ててさ、私亜澄は里中くんの事好きになったんだと思ってた」

「えっと……」


麻紀とはいつもふざけた会話ばかりで、改めてこんな風に聞かれるのは初めてだった。


「でも亜澄、里中くんといる時落ち着いた顔してたから割と安心してたんだよね。里中くんも付き合い始めてからは堂々としてたし。だから余計にあれはショックだっただろうと思って。それなりに心配してた」


麻紀が、こんな風に私を見ていてくれた事は意外だった。


「……真人のこと、嫌いでは無かった」


柄では無いとも思いつつ、麻紀の真面目な問いかけに私も誤魔化さずに答えようとした筈なのに、随分と曖昧な返答になってしまった。


「好きでも無かった?」

「……」


更に追及を重ねる麻紀に、私は口を閉ざした。


私は、真人が嫌いではなかった。

好きか嫌いかで言えば、好きだった。


眩しかった。
憧れだった。

子供の頃からずっと……


だから、好きになれると思った。


真人の様な人に私はなりたいと思った。
真人といると、少しだけ素直になれる様な気がした。

そして焦って先に進めようとはしない真人との付き合いは、とても心地よかった。


私は付き合い始めてからもずっと、真人を別の世界の人だと感じ続けていた。


そして私は、昨日の朝、真人がうちに来るまで真人のことを殆ど考えなかった。


付き合ってたことにはならないだろうと自己解決をした。



私は、真人を好きになろうと思っていた……

感情ではなく、理性の部分でそう思っていた……


「とにかく、一回はちゃんと話し合いな」


麻紀に私は答えることができず、俯き下草に目を向ける。
空々しいほどに青く瑞々しい緑は、私の心の内の後ろ暗さを浮き彫りにする。

麻紀の言う通り、一度話し合うべきなのだろう。