砂の鎖

「で、耳元で愛の言葉でもささやかれたの?」

「まさか。話がしたいって……」

「ふーん……」


麻紀は相槌だけを打って、少し考えるように黙った。
私は更に項垂れる。


「真人が何を考えてあんな態度なのかよくわかんない……」


険悪になる、もしくは余所余所しくなくのが当たり前の筈の出来事があった。
真人が私とからかい半分で付き合い始めたということを私が聞いていたんだから。

それなのに、今まで通り……むしろ今までよりも仲良さげに接してくる真人が分からなかった。


人気者の里中真人が悪評事欠かない須藤亜澄に振られたなんて噂はプライドに触るのかとも思ったけれど、どう考えても振られたのは私になる筈だ。

いや。騙された、というのかもしれない。

でも真人の周囲の友人たちがその事実を知っていたのなら、周囲に私たちの関係が悪くなる事を隠す必要だってないし、真人は私と別れたってなんの問題無い筈だ。


「……私は、里中くんが考えてる事、なんとなく分かる気がする」

「え?」


麻紀の言葉に私は慌てて顔を上げた。

麻紀は少し、苦笑していた。
いつもの口が悪い麻紀らしくない。
少し困ったような、複雑な笑顔。


「告白ゲームについては思いっきり罵って謝らせればいいと思うけどね。男子ってホント馬鹿だよね」

「……なんかそれは、どうでもいいかも……」


私はそれよりも、それを知られた後の真人の行動が分からないだけだ。
そんな私に、麻紀は驚いた様に目を丸くした。


「亜澄はさ、里中くんのこと好きなわけじゃないの?」


麻紀のストレートな言葉に驚いて私まで目を丸くして麻紀を見た。