翌朝も、いつもと同じ様に一日は始まる。
薄い雲が棚引いた、明るい一日だ。

ママが死んだ日も、よく晴れた、こんな風に心地よい天気だった。


何があっても、無くても……時間は平等に過ぎ去り朝は来る。

どんな想いで夜を過ごしても、どんなに夜が明けなければいいと願っても、関係なく朝は来る。

そして私たちは日常を受け入れて日々をいつも通りに過ごさなければいけない。


……嘘でも、前を向いてるふりをして。


私はその事実を、三年前に受け入れた。


「……拓真」


それでも今朝は、いつもと違う事が一つだけあった。

私は拓真の後姿を呆れ顔で眺めた。
拓真は門から顔を出しきょろきょろとあたりを見回している。


「よし。誰もいないな」


いつもはリビングで私を見送る拓真がわざわざ玄関の外まで出てきて私を見送ろうとしていた。


「あず。くれぐれも帰り道は気をつけろよ。何かあったらいつでも電話して。あ! 帰り迎えに行こうか?」

「うざい。めんどくさい。いらない。じゃあね」

「あずっ!!」


まだ何やら言い足りないみたいで騒ぐ拓真を置いて私は自転車を漕ぎだした。

拓真に見送られたせいで、家を出る前にポストを確認できなかったのが少し気になったけれど、昨日の今日で桑山さんから手紙が届いているという事は無いだろうと思う。

それにもう、私が桑山さんからの手紙を拓真に隠す必要もない。


拓真がわざわざ家の前まで私を見送った理由は明白で……昨日真人が来た事が相当気になっているらしい。
陸上部は厳しいから、昨日一日部活をさぼった真人は今日もさぼるわけにはいかないだろう。
真人はきっと今頃顧問に叱られしごかれているに違いない。

そうは思っていたけれど、真人が玄関前にいなかった事は少しほっとした。


真人はまだ、私と話をするつもりでいるだろうか……