砂の鎖

それでも拓真が用意した夕食は冷蔵庫の中のありあわせだけどいつもよりおかずも多い。思わず胃がぎゅうっと低い音を鳴らした。

今日はスーパーに行き損ねたけど良かった。
拓真は冷凍のアジの開きをメインに里芋の煮物とみそ汁とサラダを用意してくれていた。
一食五百円もしないだろうな。

百円均一で買った樹脂のお椀に注がれた味噌汁が、妙に気持ちを落ち着かせてくれた。


「ねえ、拓真……」

「なに?」


私は、拓真に勇気を出して声をかけた。
なるべく何でもないことの様に。
ただの世間話のように。


「あの、さ……」


今だったら、どんな話でも聞けそうな気がする……
そう思いながら、口にしたのに、思うように気軽に声を発せず私は俯き気味に口を閉ざしてしまった。


「あず?」


拓真は不思議そうに私を見る。
その表情が、徐々に心配の色に染まり始めれば、不安になった。

拓真の人生を、私の存在が邪魔をしている。そんな事は分かっていた。
ずっと分かっていた。

私がいなければ、拓真はママを忘れて生きてもいい。


「拓真は……私の父親って、どんな人だったか……知ってる?」


もし、私に本当の父親がいるのだとすれば……
桑山さんが、私の父親なら……


私は、拓真と離れるべきだろう。



気が付いていて、それでも私は逃げ続けていた。