砂の鎖

私は気を落ち着かせるために、つばを飲み込もうとして、口の中が乾いている事に気が付いた。

私はこの人が関わると妙に緊張する。

私は上品なカップに注がれた紅茶では無く、水を選んで一口含んだ。


「……どうして、そこまでして下さるんですか?」


そして、とても小さな声でそう聞いた。

聞かなければならないと思った。

聞きたくないと思った。

可能ならば、ずっと聞かずに目を逸らしていたかった……避け続けていたかった。


私に惜しげも無く大金を払い養子にしたいなんていう物好きはそうはいない筈だ。

ママと恋人だったとしても、求めていたのはママであって、子供は皆対象外だ。

そんな変わり者は、拓真しかいない筈だ。

そしてこんな風に立場があり、顔が知られ、スキャンダルなんてもってのほかだろう紳士が、そんな馬鹿な真似をする筈が無い。


「貴方は、私の大事な人の娘だから当然だよ」

「……」


桑山さんははっきりとは言わない。



それでも、この人は恐らく、私の父親なのだろうと。



私はいつからか、そう思うようになっていた。

そして、そう思うようになってから、この人と関わるのが怖くなった。