砂の鎖

(ホントに、ムカつく男!)


出がけに乱暴に郵便ポストを開ければ封筒が一通入っていた。

角が立った几帳面な白い封筒。
宛名には達筆な文字で『須藤亜澄様』と書かれている。

チラリと差出人を確認してから乱暴にスクールバッグに突っ込んだ。

そのまま自転車のペダルを勢いよく漕ぎ出す。
頬にあたる風はいつもより勢いがよく、夏を迎える前の心地よい季節の空気はざわざわとした私の感情を優しく落ち着かせてくれた。


高校までは自転車で30分かかる。
バスもあるけれど晴れた日は自転車で通っている。
経済事情もあったけれど、帰りに買い物をするには自転車の方が便利だし、何より朝のこの空気が嫌いじゃないからだ。
足が太くなるところはデメリットで、でもつい食べ過ぎてしまう朝ごはんを消化するには都合がいいというメリットもある。


拓真と暮らし始めてから四年。
拓真と二人きりになってから、三年が過ぎた。

それはつまり、ママが癌を告知されてから四年。
ママが死んでから三年が過ぎたということだ。


三年前、ママは末期がんであっけなく死んだ。
ろくに治療らしい治療をうける事もなく、倒れてからは本当にあっと言う間だった。

その一年前に、ママと二人きりだった我が家に転がり込んできた男が拓真だ。