「亜澄」


やや挙動不審気味だったに違いない。陸上部の様子を伺いながら校門へと向かっていた私は予想外な方向からかけられた声に驚いて顔を上げた。


「……真人」


真人は、校門に寄りかかって私を待ち構えていた。


「……部活は?」

「さぼった」


気まずくあたりさわりない質問をするけれど、その答えも私にはまっすぐに問い返される。


「話がしたいって、言っただろ……」

「私は……」


……どうしたらいいだろう。


私は一度、夕日に染まる真人の顔を正面から見つめた。

真人の瞳は真っ直ぐに私を捉えている。


真人は本当に、小学生の頃から変わらない。
真っ直ぐな人だ。
真っ直ぐに人を見つめる人だ。


本来だったら真人が私を避けて然るべき状況の筈。
説明を求めて真人を問いただすのが私の立場の筈。

それなのにどうして、真人が私を真っ直ぐに見つめていて、私が隠れるように真人を避けているのだろう。


子供の頃から変わっていないと思っていた真人が、遊び半分で、からかうつもりで私に告白をした。
真人がそんな事をする人だと思っていなかった私は、一ヶ月、すっかり騙されていた。

けれど、私は……