砂の鎖

こうして見てみると、大学進学には思っていた以上のお金がかかるんだということが分かる。
見ているだけでうんざりとしてくるようなゼロの多さだ。

とりあえず目星をつけていくつかメモをすると私は分厚い雑誌をバタンと閉じた。


「須藤。お前人の話を聞いていたか?」

「途中までは聞いてました。では、タイムセールの時間なので帰ります」


私が立ち上がれば佐伯は呆れ顔だ。

生徒から嫌われている佐伯にこんな口が利けるのは私だけかもしれない。
それもこれも、あの三日間のお蔭だけど。とりあえず今まで身近に進学や勉強について聞ける年長者はいなかったからこれは運が良かったのかもしれない。


「里中はどうした?」


そんな事を考えながら帰ろうとすれば、佐伯がらしからぬことを聞いてきた。
私と真人が付き合っていた事は校内誰でも知っている事だけど、この人からこの手の話が出てくるのは“意外”以外の何物でもない。


「……佐伯先生は数学と進路は頼りになるんですけど……この手の相談をする気にはなれません……」

「学業に支障はきたすなよ。二人とも」


私がしかめっ面で佐伯に言えば、いかにも佐伯らしい言葉が返ってきた。

今朝の私と真人のやりとりについて、噂話は広まっているだろうけれど……
まだ私の耳にはどんな話になっているのかは入ってこない。
こういうのは当事者が一番最後と決まっている。
少し、憂鬱になった。


「向こうのことは私は知りません」

「若者は大いに悩め」

「……失礼します」


少し口角を上げた佐伯に溜息を吐いて、私は進路指導室を後にした。