砂の鎖

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「佐伯先生って進路指導だったんだ」


放課後、あろうことか見慣れてしまった佐伯の眉間の皺が深くなった顔を眺めながら、少しニヤリと笑ってからかうようなことを言って見せた。


「バカもん。学年主任が進路指導なのは当然だろう。……お前は……謹慎が解けたと思ったら……」


また、歪に分かりにくく口角を上げるかと思ったけれど、生憎本当に呆れただけだったようだ。
多少は親近感が湧いたのは私だけで佐伯は私の顔なんて見たくも無かったようだ。
でもその言い種は酷い。


「真面目に大学調べに来てるのにバカはなくない?」


誰に言われてこんな所に足を運んだと思ってるんだ。この人は。

私の不平にまあそうか、と佐伯は納得して先ほどのバカを取り下げたようだ。


私はその日、初めて進路指導室にやってきた。

三日間通った生活指導室ではなくて、進路指導室。

職員室と同じ階の一番端にあるその部屋は、すぐ上が吹奏楽部の部室の為彼らの練習の音がうるさいほどに響いていた。
合奏なら耳障りでも無いかもしれないが、各自バラバラに思い思いの練習しているそれらの音は、とりたてて興味のない私には雑音にしか聴こえない。

こんな場所にこの先の人生について考える為の進路指導室があるのはレイアウトのミスではないかと思えてしまう。
考えすぎるな、という意図だろうか。