砂の鎖

「いいよね~。男を誘惑する技持ってる女は」

「特に佐伯みたいなオヤジが得意分野って?」

「いえてる!」


クスクスと笑いながら、いやらしい視線でこちらを見てくる女生徒が三人。

一人は横井で、後の二人もあの場にいた陸上部の女子マネージャーだ。
向こうも隠す気はないらしい。その笑みは挑発的ですらあった。

私は一つ溜息を吐き、麻紀に首を振って笑って見せた。
さすがの私だって、この程度の挑発で謹慎あけ早々問題を起こすのはまずいと分かってる。

ただ、彼女たちの前を通りすぎないと私たちは教室に行けない。
無視をすることに方針を決め、歩き出そうとした時だった。


「……お前ら、懲りてないのかよ」


背後から、怒りを帯びた低い声が聞こえた。

瞬間、彼女たちの顔もまた青ざめた。
意外な声に、私は思わず振り向いてしまった。


「真人……うちらは……」


真人は怒りの所為だけでなく、少し息を切らしていた。


さすが陸上部のエース。
短距離だけじゃなく長距離もいけるらしい。
まさかこんな早くあそこから学校まで着くなんてさすがだ。

普段から爽やかな真人が珍しく怒りをあらわにしていて、横井たちは明らかに戸惑っていて。
そんな緊迫している筈の状況に、私だけは呑気にそんな事を考えた。

亜澄、と麻紀に耳打ちをされて、それで私はやっと自分が渦中にいて、真人の登場で無視できない状況になった事に気が付いた。