「おそらくは、七重の差し金だ」


 清廉は説明する。


 「そろそろ次期当主様も大人になられたほうが……などともっともらしい口実で父上をそそのかして、自分の息のかかった娘たちを私の寝室に送り込むんだ」


 「どうしてそんなことを……」


 現代人である私には、理解できなかった。


 両親が息子の元に、「教育のため」だとか理由付けして、女を送り込むだなんて……。


 「自分が自由に操れる娘が孕みでもしたら、七重は次世代にも権力を保持できる。そんな企みだ」


 「かわいそうに……」


 「私の元へ無理やり送り込まれる娘が? それとも生まれてくる子供が?」


 「どっちも」


 当然、腹黒い思惑によって利用される娘もかわいそうだし、生まれてくる子供には罪などない。


 そして……一番かわいそうなのは清廉だ。


 周囲にうごめくのは、大人たちの醜いエゴばかり。