眠り姫と総長様


あの店員さんの香水が、湊の服に付いていて


その香りを付けたまま、抱きしめられるのが嫌だったんだ……。


だから無意識の内に湊の手を振り払っちゃったんだ……。


あたし最低だ。


「お客様、こちらに服の方をお入れ下さい。」


自己嫌悪に浸っていると、さっきとは違う店員さんが袋を持ってきてくれた。


「ありがとうございます。」


ネームプレートを見ると、店長と書かれていた。


ちょうどいいや。


「あの……」


「はい。なんでしょう?」


40代くらいの綺麗な店長さん。


「私達を接客したあの人、私情を挟んであたしの彼氏口説くんですよ。

気分が悪い。」


湊は彼氏じゃないけど、なんて言えばいいか分からないからいいよね?


「大変申し訳ございません!
すぐにクビに致します!」


「はい。そうして貰えると助かります」


頭を下げて謝罪する店長さん。


別に謝ってくれなくていいのに……

クビにさえしてくれれば。



「未衣。行くぞ。」


「はーい。」


タイミング良く、湊が来る。

……後ろには気持ち悪い店員さん。

あたしを睨んでる。


「ほらね。」

「すぐにクビに致します。」


隣にいる店長さんに耳打ちをすると、結構怒っていた。

さっきより声が低くなってる。


「ありがとうございましたぁ」


ドアの前まで付いてくる店員。

もう、さん付ける必要ないよね?