眠り姫と総長様


「お客様、お似合いです」


なんて湊にくっつきながら言う店員さんに殺意を覚える。

とてつもなく消えて欲しい。

この人クビにしちゃおうか。それがいい。


湊はウザそうな顔をしながらも、離そうとはしない。


なんで離さないの……?


口まで出かかった所で、言葉を飲み込む。


あたし、湊の彼女じゃないから言う権利ないや……


「未衣、すごく似合ってる。

これにするか。」


「うん……」


その人の隣で喋らないでよ。

早く離れてよ。


胸が苦しい。締め付けられたみたい。


「あと、靴はそれな。

おい。さっさと会計しろ。」


「わかりましたぁ。」


「そのまま着ていくから値札外せ。」


さっきとは違って、ドスを効かせながら喋る湊。


店員さんはあたしの値札を外して、会計しに行く。


その間、すごく睨まれた。

さっきの接客態度とは全然違う。


湊カッコいいから当たり前か……。


ボーッとしていると

「未衣、すごく似合ってる。可愛い。」


そう言ってあたしを抱きしめようと伸ばした手を


パシッ


「触らないで」


振り払ってしまった。


「ごめん……」


謝ってから会計するために離れていった湊。


違うのに……湊が嫌なんじゃない。