眠り姫と総長様


「あれ?倉庫じゃないの?」


倉庫とは違う道を走る車。

こっちって確か、ブランドショップの並ぶ通りじゃなかったっけ?


「倉庫の前に買い物だ。」


「そっかー。」


よく分からないけど、なにか買うらしい。


「着きましたよー」


「あぁ。
未衣、降りるぞ。」


連れて行かれたのは、有名なブランドショップ。


「いらっしゃいませ。」


上品な大人のお姉さんが迎えてくれる。


「こいつに似合うのを幾つか頼む。」


「かしこまりました。少々お待ち下さいませ。」


そう言って奥に入ってしまった店員さん。


「湊、あたし服たくさんあるよ?」


こないだみーくんに買ってもらったばかりだから、着てない服が沢山残ってる。


「俺が未衣に買った服を着てもらいたいんだよ。」


「へへっ。ありがとー。」


優しいな、湊は。


「お待たせ致しました。試着室の方へ案内いたします。」


「はーい。」


店員さんの手には、5着程の服が。

どれも可愛い。


「こちらでお着替え下さい。」


「わかりましたー」


カーテンを閉めて、服を選ぶ。


5着とも、ワンピースだ。

そう言えば、さっき湊が店員さんに何か話してたけど……これのこと?


まずは、白の上品なワンピース。


「湊ー。着れたよ」


「あぁ。」


カーテンの真ん中から、顔だけ出してきた湊。


「うーん。あまり未衣っぽくないな。」


「じゃあ次の着るねー。」


次はー……あっ、これ可愛い。


胸元が少し開いた、黒がベースのワンピース。


「ーーーー」

「………」


ワンピースを着ている途中、外から店員さんの猫なで声が聞こえてきた。

湊は完全に無視してるみたいだけど……


なんかモヤモヤする。


「これぇ私のケー番なんでぇ、もし良かったら受け取ってくださぁい。」


……女ってこんなに変わるものなの?


あたしの中で上品なお姉さんのイメージだったのに、今は気持ち悪いとしか思わない。


ーシャッ


勢いよくカーテンを開けると、店員さんが湊にベッタリくっついていた。