眠り姫と総長様


「あっ!航輝だけずるーい!」


そう言って、航輝と反対側から抱きつく陸。


両サイドから抱きしめられている未衣は

「苦しぃ……」

当たり前だけど苦しそう。


「未衣から離れろ。」


未衣を苦しめる二人を睨むと、


「「ひっ……」」


すぐに離れる。


「未衣、おいで。」


俺の元に来る未衣を抱きしめる。


「湊……」


「未衣……」


ドキドキと伝わってくる未衣の鼓動。


うなじがチラチラと見える未衣は色っぽい。

理性が……と思うがさすがにここで欲情する訳にもいかず我慢する。

雅さんに殺されるからな。


少し身体を離し、顔を見ながら


「未衣。帰ってこい。」


「うんっ」


笑顔で返事をした未衣を俺は抱きしめた。


「おかえり。未衣。」


「ただいま。湊。」


完全に二人の世界に入っていると


「あのー、」

「お二人さん?」

「俺たち居るんだけど」


雰囲気をぶち壊す航輝、海、陸。


「ちっ。」


「うぅ……」


恥ずかしそうに俺の肩に顔を埋める未衣。


ヤベェ……可愛すぎる。


思わず押し倒したい衝動に駆られる。


「そんな睨むなって。」

「目で訴えるなよ。」

「怖いから!」


目で邪魔だ、消えろと訴える俺。


「ここ人ん家!」

「勝手に部屋移動とか出来ないから!」

「我慢しろよ。」


「こーちゃん部屋移動したいの?

ここじゃ嫌?」


俺の腕のなかで首を傾げる未衣。

じーっと、航輝を見る。


「あ、あぁ!ちょっと海と陸と話したいことがあってな!な?」


陸と海に同意を求める航輝。


「う、うん!ね?海!」

「あぁ……うん。」


「そうなの?
じゃあ部屋を用意するからちょっと待ってねー。」


俺の腕の中からすり抜ける未衣。


冷たくなった腕が寂しい。



襖を開けて、

「今すぐ部屋を一つ用意しろ。」


近くにいた組員に命令する未衣。


今さっき俺たちと喋っていた時と、声のトーンが明らかに違う。

ってか、口調がまず違う。


「わかりました!」