眠り姫と総長様


「未衣。入るよ」


「………」

ノックしてから、返事はないが部屋に入る。


未衣の姿がないと思ったら、部屋に続くテラスで空を見ていた未衣。


「きーらきーらひーかるー。
おーそーらーのほーしーよー。」


透き通った綺麗な声で、小さい頃によく聞いたキラキラ星を歌っていた。


歌っているその姿はあまりにも綺麗で、
だけど触ったら壊れてしまいそうな程儚くて……

見惚れていた。


「あれ?隆斗。」


俺の気配に気づいてか、歌っていたのを止めて俺のそばに来た未衣。


「良かった…」


いつもの未衣に安心して、力を入れたら折れてしまいそうな程細い身体を抱きしめた。


「隆斗……?」


「未衣が壊れそうで怖かった…」


昼間の未衣は、冷酷そのもの。

だけど、触ったら今にも壊れてしまいそうな程脆かった。


他の男となんて会いたくない。

全身で叫んでいるような気がした。


「……ごめん。」


「未衣は俺が守るから。」


小さい頃、そう言って守れなかった約束を今ここでまた誓う。


湊の元に行くまで。


そう心の中で付け足して。



「ふふっ。ありがと。

あたしも隆斗のこと守るからね?」


「ふっ。頼もしいよ。」


「ねぇ、隆斗。」


不意に未衣が、空を眺めながら俺を呼んだ。