眠り姫と総長様


離れの片付けは組員に任せて、

風呂に入ると言って出て行った未衣。


俺は、組長室に雅さんと二人で居た。


「怖いか?」


「えっ?」


「さっきの未衣だ。」


さっきの未衣……


「正直怖かったです。
あんなに冷たい未衣、初めて見ましたから。」


俺の知っている未衣は優しい。

無表情でも、誰にでも優しく接するから組員は未衣に着いてくんだ。


まさか、未衣の口から

"殺す" "死ね"


そんな言葉が出てくるとは思わなかった。


「相手を肉体的より、精神的に追い詰める。
圭とやり方が同じだ。」


ハハ、と苦笑する雅さん。


「そうなんですか……」


「これが、

冷酷、冷血、残酷、悪魔。

そう呼ばれる篠原組のお嬢だよ。」


「………」


冷酷、冷血、残酷、悪魔。

篠原組の組長とお嬢は決して怒らせてはならない。

それは裏の世界の人間なら一度は耳に入れる事だ。


「未衣には、湊がついてるから大丈夫だろ。」


「そうですね。早くあの二人を会わせないと……」


「そうだな。」


「……失礼します。」


組長室を出て、未衣の部屋に行く。