「組長……本当にあれは未衣ですか?」
違うと言って欲しかった。
「あぁ。俺よりタチが悪いだろ。」
返ってきたのは肯定だった。
「はい。」
「相手を確実に追い詰めて恐怖を与える。一番残酷なやり方だ。」
「………」
未衣を止めたかった。
でも、恐怖で足が動かなかった。
今行ったら、確実に殺される。
そう思った。
「まず誰からが良い?」
「ひっ……」
「大丈夫。殺さないから。
ちょーっと骨をポキっとやるだけだから安心して?」
……全然安心出来ない。
目の前で冷たく鋭い目を向ける未衣。
親が親なら子も子。
なぜかそんな言葉が頭に浮かんだ。
父親は
篠原組組長で、龍神の初代。
怒らせたら命はないと言われた男。
母親は龍神の初代姫。
ちゃんと自分を持っている芯の強い人。
そんな二人の遺伝子をしっかり引き継いで産まれてきた未衣の今の姿は、
圭さんに似ていた。
一番敵に回したくないのは、どう考えても未衣だ。
早く、いつもの未衣に戻って欲しい。
そう思うしかなかった。


