「なんの真似だ」
「ふざけんな!
わざわざこっちまで来てやったのに!」
「礼の一つもないのか!」
「来てやったのに?何様のつもりだ。
礼の一つ?頼んでない事を押し付けられたのに何故礼なんてしなくてはならない。
応えろ。」
「そ、それは…常識で…」
「せっかくの休日をお前らの勝手な行動で邪魔されて、それに礼をしろ?
笑わせるな。
しかもずっと断ってきているお見合いをお前らの出世の為に全員分しろと?
それがお前らの常識か。」
「「っ………」」
「大人しく挨拶だけで帰れば良いものを」
「………」
肉体的にではなく、精神的にジジイ共を追い詰める未衣。
「私にナイフを向けるのがどういう事かわかっているのか」
篠原組のお嬢にナイフを向けるなんて、自殺に等しい。
つまり、そいつに待っているのは
"死"のみだ。
「クソガキがぁぁぁぁ!」
血迷ったのか、ナイフを未衣に向けて突進して来る傘下のジジイ。
「………」
それでも動かない未衣。
「未衣!」
危ない。
カシャン
ナイフの落ちる音が離れに響く。
……何が起きたんだ?
未衣を助けに行こうと、身を乗り出すと組長に止められた。
それをしている内にナイフの落ちる音がした。
音のした方を見ると、ナイフを持っていたジジイを捻り上げる未衣。
「クソガキ?
じゃあ、そのクソガキに負けたお前はクソジジイ以下だ。
叔父様、クソジジイ以下は何だと思います?」
「くっ……」
突然組長に話しかける未衣。
未衣が叔父様と組長を呼ぶのは、組仕様の時だけ。
「そうだな……」
ゴクッ
誰かの唾を飲む音が聞こえる。
「クソに群がる害虫だな。」
「じゃあ、害虫20匹は駆除。」
「えっ……」
声を漏らすジジイ共。
自分達のした事の重大さがやっと分かったみたいだ。


