眠り姫と総長様


「でも!もしかしたらこの中に運命の人がいるか…ぐふ」


未衣が必死に説明するジジイを蹴った。


「耳が汚れる。」


無表情のまま淡々と話す未衣。


青ざめるジジイ共を見渡すと、


「たかが傘下の分際で私に指図するな。」


低く、重みのある声が離れに響いた。



「…っ……」


ヤバイ。

本能が危ないと言っている。


「隆斗。組員を離れの前に待機させろ。

あと湊達も今日は帰せ。」


「わかりました。」


組長が俺に耳打ちをしてすぐ、行動に移す。


ちっ…あのクソジジイ共。怨んでやる。


廊下を歩いていた篠原組の幹部を呼び止める。


「おい。組員全員、離れの前に待機させろ。」

「わかりました!」


ただならぬ様子を読み取ったのか、急いで声をかける幹部。


俺も未衣が気になるため、走って客室に向かう。


渋る湊達をどうにか帰した後、すぐに離れに向かう。


襖の隙間から、覗き見している組員達。


「やべぇ。お嬢が本気だ……」
「あの時と同じだ……」
「お嬢怖ぇ。」
「死人でないと良いけど……」


コソコソ話す組員達。


「どけ。」

「若!お嬢が……」

「わかってる。合図するまで全員待機だ。」

「はい!」


小声で会話すると、離れの扉を音が立たないように開ける。


本館と違って、息苦しい雰囲気。