昔、雅さんに聞いたことがある。
ー「みーを絶対に怒らせるな。」
どうしてかと聞いたら、
ー「あいつが本気で怒ると、誰も止められない。俺でさえ。」
そう言っていたのを思い出す。
未衣が小6の時、家に敵が攻め込んできた時油断していた雅さんは頭を殴られたらしい。
幸い意識はあったものの、それを見た未衣が
凍りつく程冷たい目で笑いながらそいつを殴ったらしい。
ー「ねぇ、クズのくせに粋がってないでさっさと死ねば?
その汚い足で家に入らないでくれる?」
ー「そんなに死にたいなら早く言ってよ。
でも、叔父様を殴ったんだから、それ相応の死に方じゃないとね?」
そう言ったらしい。
見たことない程冷たく残酷なやり方の未衣に、動けなかったと雅さんは言っていた。
それから、篠原組と同盟組の中では
未衣を怒らせてはならない。
暗黙のルールが出来たらしい。
そんな事を思い出した俺は、今の状況は本気で未衣が怒っているのだとわかった。
隣にいる組長を見ると、怒っているも
うっすら焦っているのがわかる。
でも、まだ未衣は椅子座ったまま。
今は言葉だけで済んでいる。
このまま終わってくれ……
切実にそう願う。


