眠り姫と総長様


客室を開けると、未衣が来たのかと目を輝かせている陸と航輝。


「ごめん。あと1時間くらい待ってもらえる?」


「未衣は?」


わかりやすく肩を落とす航輝。


大雑把に説明すると


「そうか……」


俺だってわざと会わせない訳じゃない。

むしろ未衣の為にも、1秒でも早く会って欲しい。


全てはくそジジイ共のせいだ。

これで未衣とあいつらが今日、再会することが出来なかったら怨んでやる。


こいつらにずっと構っている訳にもいかないので、部屋を出る。


「若!全員集まりました!」


「わかった。ご苦労。」



タイミング良く報告が来たため、組長室に向かう。


「隆斗です。失礼します。」


ドス黒いオーラーの漂う組長室のドアを開けるのには勇気がいる。


「離れに全員入りました。」


「行くぞ。」


俺の前を未衣と並んで歩く組長。


「っ……」


あまりのオーラーに息が詰まる。


バン!

離れに着くなり、勢いよくドアを開ける組長。


離れに集められたバカな傘下のジジイ共は、すぐに頭を下げる。


「未衣嬢……」

「未衣嬢だ……」

「本当に……」



口々に言うジジイ共の声なんて、聞く耳も持たない組長はいつもの定位置に座る。

未衣はそんな組長についていくだけ。


「説明してもらうぞ。」


「「っ………」」


今回押しかけたのは20の傘下の組の組長。


その一人一人を睨みつけるうちの組長は
今にも殺しそうな勢い。


買い物を邪魔された組長は機嫌がすこぶる悪い。

でも、そんな事を知らないジジイ共はなぜ機嫌が悪いのか分かるはずもない。


気の毒だ……。


なんて思う心を生憎俺は持ち合わせていない。


俺も計画を邪魔されて機嫌が悪い。


すぐにでも終わらせて、未衣をあいつらに会わせたいんだ。


さっさと終わらせろよ。


ずっと拭いきれない、嫌な予感を感じながらそう思った。