眠り姫と総長様


ー隆斗sideー

3年前、雅さんから未衣が居なくなった
と聞いた時は生きた心地がしなかった。


たった1ヶ月で居場所が見つかった未衣。

でも雅さんは、未衣を連れ戻す事はしなかった。


「どうして未衣を連れ戻さないんですか?」


未衣が居なくなってから明らかにイライラして居るのに、見つけても連れ戻さない雅さんに一度聞いたことがある。


「未衣は、俺のせいで逃げたんだ。

だからみーに休暇をやるんだ。」


そこにいつもの威厳はまったくなくて、
切なそうに遠くを見つめる雅さんがいた。


「隆斗。篠原組の若頭にならないか?」


中学生だった俺はそう言われた時、戸惑った。

いくら未衣の従兄妹とは言え、俺は一般人。

この先、関わる事はないと思っていた。


「お断りします。」


「みーが帰ってきた時、隆斗に出迎えて欲しい。」


そう言われて、

「はい。」

受け入れてしまった。


きっと、この人には未衣を迎えに行けない事情がある

直感でそう思った。


龍神に関わるようになってからの未衣を観察して居た事がある。


圭さんと未姫さんが亡くなってから、人形のように感情が無くなり笑わなくなった未衣が笑ってた。


俺にはその事実だけで充分だった。

こいつらになら、未衣を任せられる。

そう思った。


それと同時に、俺がいくら頑張っても笑ってくれなかった未衣が

こいつらのおかげで笑えるようになった

と思うと悔しかった。