眠り姫と総長様


「………」


なにも言い返せない。


「俺も、組長も未衣に外に出るなとは言っていない。

むしろ、お前らの元に戻っても良いと言っている。

それでも、お前らに姿を見せないのは
戻る気がないからだろ。」


「なら、無理にでも連れて行く。」


強行突破だ。


「ふっ。なら良い。」


「あっ?」


「未衣もお前らに会いたがってる。」


「嘘ついたのかよ」


「嘘じゃない。本当のことだ。

会合でお前に会うまでは、龍神に戻らないと言っていた。

お前らが未衣をどれ程思ってるのか、
聞きたかっただけだ。」


「………」


「隆斗さー、未衣のこと大好きだから
焼きもち妬いてるんだよ。」


「未衣は渡さねぇよ。」


誰が渡してやるか。


「妹の事が好きで何が悪い。」


「はっ?」


未衣と隆斗が兄弟?

だから隆斗が若頭なのか…?

そう言われると、雰囲気も似ているような……


「えぇぇぇ!?兄弟なの!?」

「ぷぷっ。そうだよ」


笑いを堪えながら答える城田。


「その話は置いといて、っと。」


「明日、篠原組に来い。

篠原組若頭として、お前らを客として招待する。」


「あぁ。頼む。」


明日、未衣に会える。


そう思いながら、黒蝶の倉庫を後にした。