眠り姫と総長様


「おい。」


低い、感情の読み取れない抑揚のない声で部屋に沈黙が流れる。


どう聞いても、男の声じゃない。

となれば、必然的にこれは未衣が発した声になる。


高宮と篠原は横に並んでるため、未衣の表情を見ることは身を乗り出さない限り出来ない。


未衣のたった一言で顔を真っ青にする組長方。


どうしたんだ?

何が起きたのか、何に焦っているのか分からないのはオレだけ。


「2年も顔を出さないと、私の性格を忘れるのか」


2年……

この会合の時、入るのを許可されている女はただ一人。

篠原組のお嬢

そう昔親父に聞いた。


じゃあ、未衣は篠原組のお嬢…?


でもあいつの名字は姫野……


っわかんねぇ



すぐ手の届く距離にずっと探していた未衣は居るのに、遠い……。



「言いたい事があるなら直接言え。」


冷たく吐き捨てる未衣。


歳は組長方の方が上なのに、

未衣の機嫌が悪いとも聞き取れる声に


「「す、すいません!」」


頭を下げて謝る組長方。


なぜ未衣に頭を下げるんだ?

未衣はそんなに偉いのか?

こんなに焦っている組長方を見たことがない。


お前は何者なんだ……?



俺たちに見せていた笑顔は偽物なのか?


どれが本当の未衣かわからねぇよ。