「未衣。パパとママはたくさんの人に命を狙われているんだ。
パパとママが死んでも良い子でいるんだぞ?」


昔からパパとママにそう言われていた。

小さいあたしでも、その言葉の意味はなんとなく理解していた。


いつかパパとママは死んじゃうかもしれない。
ある程度のことは理解していた。



でも、幸せは突然にして崩れていった。



「みー!」

「どーしたの?みーくん」


いつも冷静なみーくんが、慌てて部屋にいたあたしの元へ来た。


「みー……」

あたしを抱きしめて、涙を流すみーくん

「どーしたの?」

「病院にいこ。」

「なんで…?」


なんとなく、嫌な予感がした。

あの時に見た、みーくんの涙は最初で最後だった。


みーくんと車で病院に行くと、地下に案内された。

《霊安室》

漢字は読めなかったけど、怖かった。

よくわからない恐怖に、みーくんの手を強く握った。


「みー。入るよ」

「う…ん。」


部屋に入ると、陽奈ちゃんと隆斗が泣いていた。

陽奈ちゃんは、ママのお姉ちゃんで
息子の隆斗はあたしの従兄妹。


冷たく、暗い部屋に真っ白なベッドが二つ。

みーくんも陽奈ちゃんも隆斗も、ベッドを見て泣いていた。