馨は、とぼとぼ

退場門へ向かって、一人で歩き出した。

――――――。







(あ、雨…)

馨の頬に、
ひとつ、雨粒が落ちてきた。

ひとつ、ふたつ、みっつ。


雨に濡れたくない辺りの客たちは
いそいそと、建物内に避難する。


だが、馨は、雨など気にせず退場門へと向かう足を止めなかった



馨は手をぐっと握りしめる。
あっ…


手のなかには、雪菜へと渡す、誕生日プレゼントを入れたかばんがあった。



(これ…どうしようか)


誕生日プレゼントを見つめて、自問自答する。


―――羽鳥に、負けたままでいいのか

ふつふつと脳裏によぎった、羽鳥と雪菜の恋人姿。



「そんなの、許されるわけ、ないんだよ…?
奪われるくらいなら、奪ってやる」


馨は、ニヤリとなにやら意地の悪い、笑みを浮かべ





――――退場門へと走り出した