「千秋、どうしたんだ…?」
「羽鳥…今日はあたしといるんだよ……?」
「そのつもりだが」
「羽鳥は、あたしのことなんか考えてない。見えてない。誰かのことを考えているでしょ。」
「!!」
(見抜かれていた…俺の、感情に)
人ごみを見るたびに、雪菜がいないかドキドキして
なぜ今日雪菜の隣にいるのが自分ではないのかと嘆(なげ)いて
肉まんを買うと、雪菜に食べさせてあげたいと、思う
その心を見抜かれていた。
「……ごめん」
羽鳥は視線を地面へと落とす。
「謝らないで!
……あたし、まだ羽鳥のこと好きなの」
千秋は羽鳥の腕を握り
少し涙目で羽鳥をまっすぐ見つめる。
夕暮れの光が二人を包む。
「お前は、俺と別れたあと、彼氏もできている。好きだというのは、勘違いだと思うぞ」
普通、誰かを好きなら、その人しか目に入らなくなって、ほかの人と付き合うことなんてできないのではないだろうか、と羽鳥は思った。
だが、そう言うと、千秋は慌てて否定した。
「違う!あたしは……あたしは、付き合った彼氏のこと、本当に好きじゃなっかった
羽鳥のこと、忘れようとして付き合ったの」
(…………)
「俺は――――」
「羽鳥、私は羽鳥が好き。…でも、あなたの中に誰か好きな人がいるのはわかってる――――――けど、その人は羽鳥の入場券を無駄にして、くしゃくしゃにさせてしまうような人でしょう??」
「――――――――」
羽鳥は息をのむ。
「私はあなたが必要なの…。」
千秋は形の良い唇を震わす。
「私は、羽鳥と別れてこれでいいんだって、思ってた。けど今日会って、羽鳥に優しく微笑まれて、’’お前の、そういう何にも染まってない不器用なところが好きだったよ’’って言われてこれが本当に好きだってことなんだって気づけたの!!」
千秋は一言一言、声を振りしぼり、声を震わせ、言い放つ。
「……」
「……」
二人の間にながい、ながい沈黙が訪れる。

