コートのポケットから手を出すと、
その手はネズミーランドの入園券を握りしめていた。
その券をいち早く見つけたのは千秋だった。
「羽鳥、良いものもってるじゃん♪」
千秋は上機嫌で羽鳥からチケットを奪う。
「あぁ…これは、ちょっとな」
羽鳥は言葉を濁す。
(チケットを見る度に雪菜のことを思い出す…)
「ネズミーランドの券、捨てるつもりだったなら、折角だし行こうよ!」
千秋がきらきらした目でこちらをみてくる。
別に千秋とネズミーランドにいっても良いのだが、雪菜たちに会うかもしれないのが恐いところだ。
千秋と二人でネズミーランドへ行ってもし雪菜に会ったとしたら、付き合っているのでは、と勘違いされるだろう。
(勘違いされたくない自分がいる)
千秋の握り締めているチケットを呆然(ぼうぜん)とみる。
なかなか答えを出さない羽鳥に千秋は、痺れを切らした。
「よし!行こう!行くったら、行く!」
「え?おい!」
千秋は羽鳥の手を強引に引き、歩き出す。
「今日遊ぶとこ迷ってたんだし、私、ネズミーランド行きたいし、ネズミーランド行ったら一石二鳥ってやつでしょ!」
千秋は嬉々として、駅の方へと向かう。
羽鳥はひとつため息をはいて、
「まあ捨てるよりかましか」
そう呟いた。

