羽鳥は、キッパリと言い切る。
千秋は、うつむいたままだ。
沈黙が二人を包む。
その沈黙を破ったのは、千秋の方だった。
千秋は、真っ直ぐに
羽鳥をみた。
「分かった…じゃあもう、言わない」
「ありがとう」
真摯な言葉が千秋の胸を打つ。
千秋は、再度目線を下ろしたあと
何か吹っ切れたように微笑んだ。
(これで、ちゃんと終われた)
羽鳥は少し、ほっとした。
なんだか、馨と雪菜にこの不毛な体の関係を絶つことができたので
自分も“純粋”に近づけた気がした。
千秋は、手に持っていた手袋をつけたあと、
ふわっと笑った。
「でも、今日は、どこかに付き合ってね。
彼氏と別れたの寂しくて。
あ、でも抱いてほしいとかじゃなくて、普通に遊びたいっていうか…!」
千秋はしどろもどろになって言う。
「いいよ、付き合ってやる。」
「ありがと!!!」
千秋は、めいいっぱい笑う。
「お前の、そういう何にも染まってない不器用なところが好きだったよ」
羽鳥は、優しく微笑む。
「――――――――…」
千秋は少し虚をつかれたような顔をしたが、すぐに笑顔に戻った。
「あはは、羽鳥ったら~、何いってんの!」
肩をバシバシと叩く。
少し、千秋の叩く手は、震えていた。
(……)
再び訪れる沈黙。
それを破りたくて、今度は羽鳥から声をかけた。
「えっと…じゃあ、今日はどこに行く?
俺は8時から予定あるからそのくらいまでしか時間は作れないが」
「うーん、どこがいいだろう、、。プール、とかっていう季節でもないし、スケートっていう季節でもないし……」
今は4月、まだ中途半端にのこる寒さがある。
羽鳥は、コートのポケットに手を突っ込む。
すると、何かくしゃりと紙のようなものが入っていた。
(あ……)
“ネズミーランド一日入園券”

