数分したあと、ありがとう、といって馨は雪菜の体を放した。

(なぜか少し寂しそうに笑っていたのは気のせいかな?)

少し考えていると、不意に声をかけられた。
「雪菜ちゃん、確か、今週の日曜日、誕生日だよね。」




確かに、今日は4月1日、水曜日。

そして、日曜日の4月5日は、雪菜の誕生日だ。




毎年雪菜の誕生日には、馨と、羽鳥を雪菜宅に呼んで、ホームパーティーを開くのが恒例となっている。




「今年も、雪菜ちゃんち、行くね?」

「はい。すっごいプレゼント、待ってますよ?」




雪菜は、笑った。

もちろん、と馨は、得意気にはにかむ。


木々が、ざわざわとざわめく。

「あのさ…雪菜ちゃん」



馨が、何か意を決したように、話しかけてくる。

「なんでしょう?」





「ホームパーティーは、夜8時からだよね…、…あのさ、もしよければ、それまでの時間を、俺にくれない?」

「え?」


驚く雪菜とは裏腹に、






ニッコリと不適に笑って、
馨は、雪菜の頬に、優しく触れた。

――――act,1雪菜視点【終】