羽鳥も雪菜と席が前後だったのが嬉しかったのか、優しくほほえみかけてくる。
「よろしくな、雪菜」
「う、うん」
「俺のテスト、後ろからこっそりのぞいたりすんなよ」
「しないにきまってるでしょ!」
などと軽口を叩きあい、二人で微笑み合っていると、突然右から声をかけられた。
「二人とも、仲いいですねぇ〜」
その声をかけてきた主は、知らない女の子だった。
「そ、そうかな」
雪菜はアハハと笑ってみる。
「雪菜ちゃんだよね〜よろしくね〜」
その女の子の話し方はゆったりしていていかにも天然ぽかった。
髪の毛はセミロングだけど、ふわふわして天然なのか、パーマがあたっているようだった。
「可愛い…」
(………つい心の声が出てしまった)
その女の子は、いかにも女の子らしく、女子力高そうなのが、オーラとしてにじみ出ていた。
「可愛いって誰のこと?羽鳥くん?」
(やっぱり天然ぽいなあ)
羽鳥にどこが可愛い要素などあるのだろうか。
中身は本当にいいやつだが、どちらかというと見た目はコワモテなようにも見える。
雪菜は勘違いでも羽鳥を可愛いなんて言えなかった。
「い、いや、あなた…だよ?」
おずおずとそう言うと、女の子はふわっと花が開くように笑った。
「あたし?そんなことないよ」
謙遜(けんそん)しているその仕草までも愛らしい。
世の男性が見たらギュッと抱きしめてしまいたくなるタイプだ。
まるで小動物のリスみたいな。
「それに、あなたじゃないよ、あたしの名前は三上ゆずだよ
雪菜ちゃんの右隣の席になったの、よければ仲良くしてね?」
ゆずは雪菜の手をやさしくきゅっとつかんだ。
こんなの男子がされていたら確実に落ちるだろう。
「よ、よろしくね!!」
(まさか、声をかけてくれる人がいてくれるなんて!)
席替えをしても、友達ができるか不安だった雪菜は内心とても喜ぶ。
「羽鳥くんも近いね、よろしくねっ」
「ああ。よろしく」
羽鳥はさっき雪菜に対して取っていた態度と180度変わり、ゆずには当たりさわりなくそっけなく返す。

