百合は、薔薇になりたいと思った。 薔薇を愛する彼に、愛されたくって。 私の不容易な発言のおかげでめでたく“お婿さん”になった彼に。 「弥生、お前」 視界が淡い海の中になる。 好きな人が、驚愕に満ちた目で私を見る。 「…っな、いでよぉ…」 泣いてると気づきたくなかった。 薄汚い百合なんて、見ないで 薔薇とは比べ物にならない。 劣等感が、私を襲う。 仕事が嫌なんじゃない。 薔薇を守るための汚れ役になるのが嫌なんだ。