智さんがそれだけを言って、直樹に向き直った。




「行こう、直樹。俺は彼女を許すつもりは全くない」


「俺もそうしてくれるとありがてぇな」


智さんがあたしを好きだと言っていたけど、本当に元カノのことを諦めることが出来たのだろうか?

どこか迷子のように揺れている智さんの瞳に、違和感を覚えた。


それにしても、2人がもう1度仲直りできて本当によかった。





あたしは歩き出した2人の後を追った。





(智さんの彼女って、誰なんだろう…)





2人の話では、本当に優しそうなイメージしかない。


あたしとは正反対の、清楚系女子。





でもまさかあたしの知っている人だなんて、このときは思いもしなかった。







直樹のバイクに乗せてもらうと、2人の学校に向けて走り出す。







(智さんがあたしを好きだなんて、全然気づけなかった…。



だから直樹のところに戻るとき、キスをして「好きになってごめん」って意味で謝ったんだ…)