狐の呪い 〜社の奥の、その向こう〜




ニカッと笑うおじいさん…永吉さんは、75歳にはとても見えない。


筋肉あるし歯もあるし、ボケていなさそう。一人暮らしらしいけど、一人でなんでもやっちゃうらしい。


「じゃあ奥の部屋借りるね」


「おお。飯ができたら呼ぶわ」


渋木くんの後についていき、廊下の角部屋に向かう。かなり広いその部屋に、少しの家具と押入れ、ずらりと壁一面に並んだ書物があった。


「ここで調べて、さらに詳しいことや昔のことを知りたいときに倉庫にいこう。ま、ここでもかなり調べられるけどね」


コートを脱ぎ、荷物を机のそばにおく。渋木くんも荷物をおいたあと、台所からお茶を持ってきてくれた。


「壁一面にある書物は殆ど、祖父の記録。あとは先祖の残したものとか…あ、あったこれこれ」


壁の本棚から一冊の本を取りだし、あたしに手渡す。


「まずは基本的なことを知らないとね。狐について、<守護神>について、<呪い>について…基本的なことはこれに書いてあるから」


「基本的なこと…。ってことはかなり奥が深いってこと?」


「多分?…祖父が記した書物はたくさんだけど、要約するとそんなないと思う。でも何事もまずは基本からでしょ?」


「確かに…」


頭がいい渋木くんに言われると、かなり納得がいく。