狐の呪い 〜社の奥の、その向こう〜





「よく分かんないんだけど…」


「まぁそうだろうね。…かつての<守護神>はこの地を護る神様だよ。この地はかつて<守護神>がいたから平和でいられたんだ。農作物も雨も、この地だけは枯れなかった。その<守護神>を崇め、祀り、護る…それが僕たち渋木家の役目」


「でも病院は?それにあたし、渋木家がそんなことしてるの、初めて聞いたよ」


「病院は父が開業したんだ。渋木家の役目が嫌でね、要するに反発したんだ。先祖代々の役目がいつか自分に回ってくる…自分の人生なのに、好きに生きられない。父は幼い頃から嫌だったらしいよ。それで始めたのが病院。だから父は祖父が大嫌いだし、役目の話をされるのが大嫌い」


遠くを見つめ微笑みながら、渋木くんは続ける。


「でも僕は病院を継ぐ気はない。僕に継いで欲しいようだけど、あいにく僕は渋木家の役目を果たしたいからね」


役目を果たしたい…。つまり渋木くんはかつての<守護神>を崇め、祀り、護る…ってこと?